2010年6月27日日曜日

六百六十円の事情/入間人間

六百六十円の事情 (メディアワークス文庫)六百六十円の事情 (メディアワークス文庫)
入間 人間

アスキーメディアワークス 2010-05-25
売り上げランキング : 450

Amazonで詳しく見る by G-Tools
どーでもよくて、とてもたいせつな、それぞれの事情。――カツ丼 六百六十円。
 世の中には、いろんな人たちがいる。男と女。彼氏と彼女。親と子供。先生と生徒。そして爺ちゃんや婆ちゃんとか。その中には、「ダメ人間」と「しっかり人間」なんてのも。
 あるところに、年齢も性別も性格もバラバラな「ダメ」と「しっかり」な男女がいた。それぞれ“事情”を持つ彼らが描く恋愛&人生模様は、ありふれているけど、でも当人たちにとっては大切な出来事ばかりだ。そんな彼らがある日、ひとつの“糸”で結ばれる。
 とある掲示板に書き込まれた「カツ丼作れますか?」という一言をきっかけに。入間人間が贈る、日常系青春群像ストーリー。
メディアワークス文庫オフィシャルページより引用

 コミュニティ掲示板の書き込みから始まる繋がりから、個人の傍からみればどうでもいい、当人とっては大事な事情を乗り越え、ちょっとしたことからでも生産的な活動へ向かうとても前向きなおはなし。
 内容的には、リア充ばくはつしろ、的な内容ではあるんだけど、見事な青春群像劇です。老いも若きも青春してる。各章ごとの語り手は変わるけど、みんな相方がいるので、掛け合いがとても楽しく、 それぞれの登場人物たちが好きになれる素敵なお話。

好きなのは一、二、六章。

  一章は音楽を始めるニートのお話。ひねくれ具合が入間作品の主人公としては標準的で、慣れている人ならスラスラと読める。入間作品苦手な人は1番読みにくい章かも。
 作品とテーマを1番分かりやすく達成していたんじゃないかな。 養われるだけはいやだから、自分で稼いで、自分でメシを食う。そのために、続けてきたことを評価に晒す。1番まっすぐで、分かりやすい現状打破だった。
 大人たちが可愛らしいというかなんというか。先生はもちろん、地主のおっちゃんとかさ。手のかかる子ほどかわいいってか。

 二章は青春味の濃さが他の章と比べ数倍。まだまだ青々しくて、直視するのがちょっと恥ずかしいレベル。処女と童貞と呼び合う関係ってどうなんよ。この二人が致す未来があるのなら、その先をちょっと見てみたい気がする。たぶんリア充ばくはつしろしんでくる、ってなる。 
 高校時代ってバイトしたことないと、バイトしてる人が、ちょっぴり大人に見えたよね。ちょっとしたことで気になり始め、きかっけさえあればあわよくば、と考え、動けるかどうかが分かれ目。その成功例。青い果実って、熟した果実より硬いから、ちょっとしたことじゃ傷なんてとかねーんだから、突っ走れ。そんあお話。あと透けるブラ紐は良いものだと思う。

 6章が収束点。バラバラだけど、どこかに繋がりのみえた物語が、やはりカツ丼を中心としてまとまる。単独では意味のよくわからなかった、三章も五章六章で補完され、綺麗な形を作ってる。好きなのは一章二章なんだけど、一冊の群像劇をとしてみると、三章五章六章の関わり方がとても綺麗な形の枠組みを作っているように思える。カツ丼一つでここまでのおはなしを書ける、入間人間という作家に衝撃すら覚える。

 プロローグで湧き上がるニヤニヤ感。特にラストの「〇〇は、〇〇〇〇〇〇です! はもう最高だった。みーまーでデビューしたけど、最近が爽やかな作品増えてきた入間先生。次は、爽やかなのか、はたまたまどろっこしい言い回しを堪能する作品なのか。次にどんな作品を書いてくれるのか楽しみです。
  

0 件のコメント:

コメントを投稿