2010年6月2日水曜日

道徳という名の少年/桜庭一樹

道徳という名の少年道徳という名の少年

角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-05-11
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直木賞作家がおくる、極彩色のファンタジック短編集!!
町でいちばん美しい三姉妹が死んだとき残ったのは(1,2,3悠久!)、愛するその「手」に抱かれて私は天国を見る(ジャングリン・パパの愛撫の手)――ゴージャスな毒気とかなしい甘さに満ちた作品集。
角川書店オフィシャルページより引用 

私の男、ファミリーポートレイトとかに近い、ドロドロしたお話。 その方向性で徹底的にエッセンスだけを抽出した感じ。不思議な体験とか、倫理的にどうよ?とか思うぶ部分もある意味でもこういう方向性の集大成的な1冊。
個人的にはこういう方向性はイマイチあわないんだよね。私の男とかファミリーポートレイトとかは少女期の心情の描き方とかはすごく良かったんだけど、この作品には物心つく世代になることには既に何か得てしまって達観した感じのある人物たちばっかりで、ちょっと肩透かしをくらった感じ。エッセンス抽出の段階で、自分の求める成分が抜かれた感じがした。世間が桜庭に求めるものはこういう作品だったのかな


 丁寧な装丁と淫靡とも言える挿絵が美しい。「大人の絵本」という表現はうまいなぁと思う。雰囲気を味わう作品だね。アロマエッセンスは飲まないでしょ。あんな感じで立ちのぼる匂いを周囲にまき散らしながら読む作品。
 読んで何かを語ったりする作品じゃないから、あまりどうこうかけるわけじゃないけど、とにかく濃い。むせ返るような濃さを持った、苦手な人は数ページで逃げ出すような、ある意味で徹底した娯楽作品。言葉と美しさと世界観の美しさのみで最後まで引っ張ったのは桜庭の筆力なんだろうなぁ。 

 読みにくかったり、嫌いなわけじゃないんだよ。ただ、今の桜庭ってこうなのか、ってのを実感しただけ
で、これからも自分の好きな作家に挙げるだろうし、新しい作品がでれば買うだろうし。でも評判次第では、文庫落ちを待つぐらいはするかも、ってぐらいには思う。 
 七竈ぐらいのドロドロ感が好きで、この作品にはあまりにも明かりがなかった。こういう男女の背徳的なドロドロが好きなのって、昔からの桜庭ファンには少ないじゃないかと思うのは考えすぎかな。否定的な感想を見かけないし、自分が懐古主義者なだけな気もする。確かに、酔えるような濃い作品だし、そういう面でも桜庭らしさはあるんだけど、逆に荒野で見られたような突き抜けた青々しさが全く感じなかった。

GOSICKは続きを書くと言いながら全く音沙汰なしなのが気になる。なにやらアニメ化とかいう噂をまた耳にしたけど、それにあわせてくるのかなぁ。レーベルはやっぱりスニーカー? 

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