2010年6月2日水曜日

あやかしがたり3/渡航

あやかしがたり 3 (ガガガ文庫)あやかしがたり 3 (ガガガ文庫)
夏目 義徳

小学館 2010-04-20
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少年は旅立つ。あの男と、宿命と戦うために──。
ふくろうとの決別の後、江戸にて剣の腕をさらに磨く新之助に、公儀隠密妖異改の影が忍び寄る。公儀隠密は家族を人質に新之助にある事件の解決を依頼する。そして、その事件にはふくろうが絡んでいるらしい。かつて、ふくろうは自分には譲れないものがある、自分の進む道に新之助は来るべきではないと言っていた。ふくろうの真の宿命とは何なのか? すべてを捨て、新之助は強くなりたいと誓う。彼に追いつき、再び出会うために……。旅に出る新之助、目指すは南国・トカラ列島。いよいよクライマックスに突入したシリーズ第3弾!
ガガガ文庫オフィシャルページより引用 
  
 時代劇+ラノベというなんとも異質な組み合わせの作品。時代劇といってもメインはチャンバラではなく、主人公の新之助の苦悩。強さを求め縁を切り捨てることとと、「見捨てない」ということの間で苦悩する様がとても痛々しい。それを支えるのが強さを求めることになった原因の非日常そのももである、ましろとくろえ。皮肉というのはあまりきつい仕置なのではないか。
 苦しみ、自らを傷めつけ強さを求め、向かう先にも苦しみがあるのがわかっていて、向う姿が新之助らしいけど、やはり痛々しさの残る最後であった。個の目的を果たしたその先に、なにを為すのか、続きが出るようなので気になる。
 読書メーターなんかでは、読者数が巻を追うごとに減り、3巻は現状で1桁。でも、すごくいい作品だと思う。表紙で損をしてるのは否めないけど、このイラストはとても合ってるし、個人的には凄く好きなタイプのイラスト。 

平均の中で異能であり、異能の中ではまだ足元には及ばす。新之助は異能の方で昇りつめ、ふくろうを目指した。でもこれは昇りつめているのか、はたまた堕ちているのか分からない。全てを捨て、残ったのはふくろうへの執着だけ。彼に到達してしまったときには何も残らないのは見えていたはず。そのなかで新之助を支えたのが、ましろとくろえ。なんて苦しい物語なんだろう。
 ふくろうと決着をつけ、涙し、このあと新之助が目指す先はあるのだろうか。公儀隠密妖異改として、動くことはさらに彼を苦しめるんだろうし、見捨てることができないから、抜けることもできない。なにゆえに彼はここまで自分を苦しめるんだろう。

これで完結かな、と思ってたらまだ続くみたいだね。これで終りでも違和感ないけど、先が気になるのは確かに。 新之助はいつになれば休めるのだろう。

話は変わって、作者の渡航さんのブログが非常に面白いです。コメディとか書いて欲しいなぁとかつい思ってしまった。 

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